会計上は、会社で取り決めた耐用年数や償却率により減価償却することが可能だが、法人税法上は、損金経理を要件に、償却限度額に達するまでの金額までしか損金算入できないという一定の制限が設けられている。この点、当期に「償却不足額」が生じ、前期に「償却超過額」がある場合には、その「償却超過額」を当期の「償却不足額」に充てて損金算入することになる。
ところで、一部の会社では減価償却費について、利益調整等を目的に、当期の償却限度額の範囲内であれば「償却超過額」の一部のみを任意で損金算入できると考える向きもあるが、償却限度額の範囲内とはいえ、それは行えないことになる。
前期において別表四で加算等した「償却超過額」を当期の償却限度額に達するまでの金額まで損金算入する根拠は、当期の損金経理額の中に、“償却費として損金経理した事業年度前の各事業年度における損金経理額のうち償却事業年度前の各事業年度で損金算入されなかった金額を含む”とされていることによる(法法31@C)。
つまり、当期の損金経理額の中には、前期に損金経理した金額のうち損金算入されなかった金額である「償却超過額」が自動的に含まれることになる。「償却超過額」であっても、前期において既に損金経理を行い法人の償却費として意思表示を行っていることになるため、当期の損金経理額に含めた上で、償却限度額に達するまでの金額まで損金算入する必要がある。
例えば、X年に償却超過額60が生じ、X+1年の償却限度額が100で、償却費として損金経理した金額が80だったことにより償却不足額20が生じたとする。X+1年においては、償却超過額60のうち20を損金算入することになる。利益調整等を目的に、本来損金算入すべき償却超過額20のうち10のみを損金算入することはできない。
税務通信平成26年6月9日号より
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