当期(欠損事業年度)に生じた欠損金額を、前記(還付所得事業年度)に繰り戻すことで納付済みの法人税額の還付が受けられる「欠損金の繰戻し還付制度」。還付後に申告誤りが判明し、還付額が申告額より増える場合であっても、増差分が還付されることはないという。
法人が同制度の適用を受ける場合、確定申告書及び還付請求書に還付請求額を記載して提出する必要がある。税務署長は、請求の基礎となった欠損金額等の必要事項について調査した上で、請求に係る金額を限度に還付するとされている(法法80F)。
ここでいう “ 請求に係る金額を限度に還付する ” とは、還付請求額の算定時に確定している各課税事業年度の所得等に基づくことが取扱いで示されている(法基通17-2-2)。よって、計算の基礎となる数字が過大又は過少で、事後に修正申告をした場合であっても、最終的に還付される額は、修正申告 “ 前 ” に還付請求額を算定した時の額となる。
例えば、還付額の算式「前期の法人税額×当期の欠損金額/前期の所得金額」に基づき、欠損事業年度の欠損金が700、還付所得事業年度の法人税額が300・所得金額が1,000という場合、還付請求額は210(=300×700/1,000)となる。仮に、還付所得事業年度に計算誤りが判明し、本来であれば、法人税額が500・所得金額が1250、還付請求額が計算上280(=500×700/1,250)となるものの、還付額は当初計算額の210から変更されない。
同制度の必要書類の提出は、欠損事業年度の確定申告の提出と同時に行うこととなっている(法法80@B)。還付請求書だけを期限後提出した場合、自己の責めに帰すべき事由がなければ認められる可能性があるものの、原則通り期限内提出を意識したいところだ。
なお、還付請求額の記載箇所は、法人税の額が法人税別表一の27欄の外書き等に、地方法人税の額が同書45欄の外書きに、それぞれ記載することになる。
税務通信令和3年3月1日号より
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